親子ふれあい教室 大山千枚田見学会報告 はじめに 子供も大人も初めての経験 夏休みも終わりに近い8月25日、千葉市周辺からと地元鴨川市の親子合わせて30余名がバスなどで千枚田のある鴨川市大山地区の「棚田倶楽部」に集合、眼下に広がる千枚田は稲刈りを1週間後に控えて稲穂の黄金色があざやか。開校の挨拶後さっそく参加者は「脱穀からおにぎりまでコース」と「祭り寿司手作りコース」の2つに分かれて農業「体験」スタートです。子供たちはもっぱら「脱穀〜おにぎりコース」で、脱穀は二昔前の千把扱きを使っての作業。倶楽部会員でもある地元農家の人にやり方を教わりながら真剣に取り組みます。続く籾摺りはすり鉢に籾を入れ野球のボールを使って摺りつぶすという当倶楽部発案の方法で、みるみる籾が玄米に変身してゆきます。最後は大釜で炊き上げたご飯を各自おにぎりに握って完了。約1時間の農作業でした。 一方、「祭り寿司コース」はお母さんたちが張り切って応募してきました。こちらは倶楽部婦人会員の指導で段取り良くきれいな太巻き寿司ができあがってゆきます。 両コースが終わったのが丁度12時前。参加者は自らの作品と他のコースの作品あわせて仲良くおにぎりと祭り寿司を口に運び満足顔でした。 棚田保全の苦労話 食事の合間に当倶楽部理事長さんから苦労話などを聞きました。「今でこそ棚田は注目を集めているが、正直な話、農家の後継ぎとして機械も入らない狭い田んぼなど迷惑千万などうしようもない親からの引継ぎものなのです。」「この厄介者を何とか生かしてゆく道はないか仲間と知恵を出し合ってできたのが田んぼのオーナー制です」「地すべり地帯特有の地形でもある棚田は水田として日常的に維持管理することによって地すべりなどの土砂災害を未然に防いでいる」などの言葉が印象に残りました。(ちなみに大山千枚田は3ヘクタールの面積で約400枚の田んぼに分けられています。同じ千葉県でも北の印旛沼周辺では1枚3ヘクタールの水田が珍しくないというのに。) 地すべり対策工事現地見学 昼食後、大山千枚田に別れを告げ、次の目的地嶺岡にある「千葉県酪農のさと」周辺の地すべり対策現場に向かいました。千葉県の地すべりは房総半島南部の嶺岡山地周辺に集中して起きています。 <日本列島が形作られる2000〜1500万年前頃、日本海拡大に伴い生じた断層帯に蛇紋岩等が貫入して破砕帯が形成された。この過程は海底でおきたものだが、その後の隆起活動で陸化し現在の房総半島が形づくられてきた。特に嶺岡地域は蛇紋岩や周りの堆積岩が破砕作用をうけた地域にあたり、地すべりしやすい地質環境になっている。昭和20年代、50年代には大きな地すべりが発生して人家倒壊の被害も出た。その後対策工事等も継続的に進められている。> 地すべり対策現場では千葉県鴨川整備事務所の方からから説明を受けました。山腹に設置された集水井の説明には参加者一同熱心に防護ネットの上から井戸の中を見入っていました。昼休みにビデオで地すべりを起こす要因に水のありなしが大きく影響することを予習してきたので、地下水を排水することの意味が理解できたようでした。 その後、日本酪農発祥の地とされる「酪農のさと」へ。園内を流れる砂防河川丸山川の砂防環境整備事業で整備された「ふれあい渓流」で、子供たちは思いっきり水遊びして夏の暑さをふきとばしていました。 最後は自分たちで作った「お祭り寿司」と嶺岡山地で採れたこぶし大の「蛇紋岩」をお土産にして帰路につきました。 帰りのバスの車中でクイズを出しながら分かったことですが、大山千枚田1枚の田んぼ面積は100m2足らず。ここから獲れた米で子供1人が1年間に食べるごはんをまかなえるということでした。改めて棚田保全、国土保全の大切さを実感しました。
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