語 り 継 ぐ 災 害 史 ― 小 見 川 が け 崩 れ 災 害 ―
昭和46年9月の豪雨によるがけ崩れ災害を地域の小学生に語り継ぐ
学 習 会 報 告 書
NPO防災千葉会員 小林 均
1.開 催 趣 旨
わが国は世界でも有数の地震国であり、また、例年、相次ぐ台風の襲来や前線豪雨な
どにより自然災害が毎年全国各地で発生し、改めて日ごろ空の「備え」の重要性が問わ
れている。
いつ起こるかわからない災害を未然に防ぐことはできないが、日ごろからの「備え」を
万全にすることで被害を最小限にくい止めることができる。
昭和46年9月6〜8日、秋雨前線の影響と台風25号の接近に伴う豪雨は千葉県全域
に大被害をもたらしたが、特に東総地域(旧小見川町)は「がけ崩れ」で甚大な被害に
見舞われた。
この地域がかつて被った激甚な災害を再認識し、いつ起こるかわからない災害への「備
え」と被害軽減を目的に「語り継ぐ災害史-小見川がけ崩れ災害-」と題して香取市小見
川地区の小学生と保護者、防災関係者を対象に被災当時の写真や新聞記事のパネル展
や被災者体験談等を内容とする「がけ崩れ学習会」を開催した。
2.開催日時
平成19年9月4日(火) 8時30分〜11時30分
3.会 場
千葉県立水郷小見川少年自然の家(香 取 市 小 見 川 5249-1)
4.主 催
香 取 市・香 取 市 教 育 委 員 会・N P O
防 災 千 葉
5.後 援
千 葉 県・千葉県教育委員会・全国治水砂防協会千葉県支部
千葉県河川協会・千葉県道路協会・日本赤十字社千葉県支部
6.プログラム
時 間
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内 容
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備 考
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8:30 〜8:50
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災害写真展
・パネル展示
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【オリエンテーリング室】
展示時間(8:30〜11:30)
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9:00
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会場集合(着
席)
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体
育 館
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9:00 〜9:10
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学習会次第説明
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9:10 〜9:25
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主催者挨拶
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香 取 市 長 宇 井 成 一 氏
NPO防災千葉理事長
根 本
亮氏
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9:25
〜9:50
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がけ崩れ災害(ビデオ放映)
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9:50
〜
10:00
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休 憩
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10:00
〜 11:00
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お 話
・自然災害の話
・被災者の体験談
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楢村光雄氏(NPO防災千葉)
春日吉五郎氏
星野俊一氏
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11:00
〜11:10
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休 憩
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11:10
〜 11:20
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非常食炊飯の説明
・炊飯袋の作り方
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小 林 均 氏
(NPO防災千葉) |
11:20
〜 11:30
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講 評
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香取市教育委員会教育長
関 亮 氏 |
1:30
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解 散
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[ 展 示 内 容 ]
災箇所図 (1/2500 4m×5m)
1枚
被災写真(A1〜A3) 50枚
新聞記事(A1〜A2)
6枚
7.参 加 者 数
333名
(1)香取市小見川地区小学校児童(5年生・6年生)5 校
233名
香取市立小見川中央小学校・香取市立小見川東小学校
香取市立小見川西小学校・香取市立小見川南小学校
香取市立小見川北小学校
(2)保護者・防災関係者等 100名
8.学 習 会 報 告
佐原市教育委員会の用意したバスで8時15分頃から児童が順次到着。
会場につながるオリエンテーリング室に設けられた展示コーナーは、当時被災写真や
新聞記事を熱心に見入る小学生で混雑した。
「NPO防災千葉」会員の説明に改めて災害の恐ろしさを語り合う児童や被災箇所図や写
真を見比べながら当時を偲ぶ地元の人の姿も見受けられた。
また、オリエンテーリング室では先生が今日の学習会の目的と意義を車座になって児
童に教える姿も見られ、先生からは「学校に帰ったら今日習ったことを授業のなかで
感想文として発表してもらうからしっかり頭に入れて帰るように」との話もあり、皆
、真剣な表情で聞き入っていた。
学習会は宇井香取市長の挨拶で始まり、災害の恐ろしさ、防災の大切さなどの話があ
り、9月1日の「防災の日」の定められた理由やイノシシ年に大災害が多く発生して
いる話などが語られた。続いて全国各地で起きた土砂災害を紹介したビデオが流され
ると、初めて見る「土石流」のすごさや「地すべり」・「がけ崩れ」の恐ろしさに児
童は真剣な表情で見入っていた。
自然災害の話では、日本列島の地学的な特徴や自然災害の発生のしくみまた、災害の
予知と防災への心構えなど、NPO防災千葉の楢村講師の写真や図を使った解説に、
一般の参加者も興味深げに聞き入っていた。
学習会の中心テーマである被災者の体験談のコーナーは、惨事の原因となった秋雨前
線の活動や台風25号の動きなど、当時の気象状況についての楢村講師の説明に続き
、元小見川町長(被災当時企画課長)の春日吉五郎さんと地元で畜産を営む星野俊一さ
んから被災体験の話が紹介され、星野さんは裏山の「がけ崩れ」で倒壊した家屋から
負傷者を救出した話や友人を亡くした体験談など災害の悲惨さを語り、「危険を感じ
たらまず避難」と結んだ。
このコーナーのコーディネーターを務められた春日さんは、「小見川には利根川、黒
部川などの水害もある」と防災への 取り組みの大切さを訴えこのコーナーを締めくく
った。
体験談のあと、児童からは日頃の備えはどうしているかなど活発な質問も寄せられまし
た。
先生からは「防災」に対する学校の取り組み状況などが紹介された。
また、NPO防災千葉の小林会員からは日本赤十字社千葉県支部から提供された炊飯
袋を使って「非常食炊飯」の作り方の説明が行われた。
最後に関香取市教育委員会教育長から講評があり、36年前の災害を忘れることなく
災害の恐ろしさ、悲惨さを改めて認識し、日常生活のなかで防災への取り組みを常に
心がけ、防災に対する心構えを身につけてほしいとの訓辞で学習会を閉会した。
なお、この学習会の様子は当日の午後6時10分からのNHK「首都圏ネットワーク
」で放映されたほか、翌日の朝日新聞、千葉日報に掲載された。